夜な夜な港区界隈で「ハイスペック男性」たちと飲み会を繰り広げている港区女子。飲み会で年収数千万円の男性と出会い、結婚した女性たちはさぞかし余裕のある生活をしているだろうと思うと、違うケースもあるようだ。現役港区女子の吉川リサコ氏がリポートする。
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モエミは、今日の夕飯について頭を悩ませていた。夫のコウキには、美味しいご飯を提供したいが、渡されている生活費では不可能なのだ。
彼女は生活費なんて気にしたことがないお嬢様の元港区女子である。小学校時代から私立の有名お嬢様校に通い、一般事務をしながら港区女子として飲み会によく参加していた。そこで出会ったのが投資銀行に勤めるコウキだ。
モエミは、吉岡里帆を思わせる清楚な外見で、港区の飲み会ではモテるほうだった。もちろん、コウキ以外のハイスペック男子からもアプローチがあった。
コウキはといえば、実家はそれほど裕福ではなく、奨学金で大学を出たらしい。ただし、投資銀行で20代のうちから稼ぎまくり、奨学金は即返済。彼は結婚前、年収6000万円くらいあると語っていたことがある。精悍な印象で、顔は賀来賢人を浅黒くした感じだろうか。
独身当時のコウキは家賃30万円の港区のマンションに一人暮らし、ポルシェのマカンを乗りこなし、靴は港区女子なら見れば分かるジョン・ロブやエドワード・グリーン。彼の家に行ったモエによれば、ハウスキーパーを雇っていて部屋はピカピカだったという。英語も堪能で、これぞイケメンハイスペの鑑!のような男だった。
コウキはそれまで気が強そうな帰国子女の女性や外国人女性とばかり付き合ってきたが、どこかで意見がぶつかることが多く、結婚には至らなかった。しかし育ちの良いモエミのおっとりとした性格と男を立てる姿勢を見て「こういう子なら家庭を持っても」と結婚を決めたという。
モエミは会社勤めもしていたし、人並みに飲み会も好きで港区女子の輪に加わっていたが、もともとのおっとりした性格ゆえか、男性がタクシー代を渡そうとしても「電車で帰ります~」と言って場を和ませるような子だった。
だが、それがコウキに「征服感」を与えてしまったのかもしれない──。
2人の新居は、家賃40万円。だが、モエミに渡される生活費は日用品、食費、雑費込みで10万円だった。といって、モエミに生活費を負担しろとは言わない。「これでうまくやって」というのだ。これにはさすがにモエミも、思ったより少ないと頭を悩ませた。
コウキはほぼ毎日、モエミの手料理を欲した。1日5品のおかず、毎日違うもの。部屋も綺麗に掃除することを要求した。
「俺よりは稼ぎは少ないんだからきちんと家事はやって」「そんな少ない給料のために働く意味あるの?」
そうモエミに言い続けた。モエミにとっては、仕事を辞めたら買いたいものも買えないし、独身時代よりカツカツの生活になる。だが、完璧な家事のためには正社員ではいられない。モエミは仕事を変えた。勤務時間は少なくなったが、給料も減った。