著作権を無視したまとめブログや無断転載サイト、アダルトサイトの収益は広告を自動表示させるアフィリエイトのシステムを利用したものが主流だった。ところが最近では、訪問者が閲覧するだけで仮想通貨のマイニング(採掘)を自動的にさせることで利益を得る手法が広まっている。ライターの森鷹久氏が、脱法サイト管理が本業となった元システムエンジニアに、収益構造の変遷を聞いた。
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関東在住の星川一夫さん(仮名・30代)が、いわゆる脱サラをし、ネットビジネス一本でやっていこうと決意したのは五年前。システムエンジニア(SE)だったが、サラリーマン収入を副業収入が超えてからちょうど半年経ったタイミングだった。
「会社の月給が手取り23万円で年収は350万くらい。いくつか持っていたホームページのアフィリエイト収入は月に40万円だったので、思い切ってネット一本でやってみようと……」(星川さん)
趣味の「アダルトサイト閲覧」中に、ふと「もっと見やすいサイトが作れるのでは?」と思い、わずか半日でオリジナルのホームページを作り上げた。掲示板にアドレスを張ったり、ツイッターで宣伝アカウントを作ったりして、一か月後には一日に数万アクセスを稼ぐようになった。
成功のきっかけは「日本人以外のアジア人にも見てもらえるようなサイトを作った」こと。中国語、韓国語に加え、タイなど東南アジア諸国のユーザーにも見てもらえるよう、多彩な言語の翻訳システムを組み込んだ。同様のサイトを二つ、三つと公開し、二年前には一日の総アクセス数は数百万をたたき出し、ホームページの広告収入だけでも月収100万円を軽く超えるようになった。しかし……。
「要は、ネット上の脱法サイトに上がっている有料動画を違法に転載しているだけでした。転載するためにいくつかの有料サイトに登録していて、自分のサイトのコンテンツ制作料はそこの会費だけです。月に数万円かかる程度だから、収入に比べて安上がりですよ。いつかはできなくなるだろう……と思いながら早5年。ズルズル続けちゃっている……」(星川さん)
脱法サイトとは、日本国内では違法な無修正アダルト動画などを、海外のサーバーに置いたホームページを通じて主に日本国内の日本人ユーザーに閲覧させているサイトだ。昨年、これら脱法サイトを通じて違法な動画を撮影、販売していた人物らが摘発されたこともあったが、当局と脱法サイト運営者のいたちごっこは今なお続き、脱法サイトの根絶は「事実上不可能」(捜査関係者)という状態なのだ。
こういった実情について、頭を悩ますのは何も当局関係者だけではない。アフィリエイト広告を手掛けるネット広告事業者らも、違法サイト、脱法サイトに広告を掲載することで収益を上げるユーザーの排除を目指す。広告主が望まないサイトに広告が掲載されてしまうのを防ぐためだけでなく、犯罪行為に収益を与えないためだ。
「アフィリエイト広告が掲載された違法なサイトを確知し、広告の掲載をストップさせるシステムの開発や、収益を凍結する通知を出しています。はっきり言って焼け石に水、といった状況で、そのシステムすらかいくぐる上級ユーザーもいます。でもやらないよりはマシで、当局側への”対処しています”というアピールにもなっている」(ネット広告代理店営業マン)
前述の星川さんも、こうした当局、広告代理店側からの規制をうけ、これまでに閉じたサイトは数が知れないと話す。しかし、すでにアフィリエイト広告で収益を上げるというスタイルは「時代遅れ」とも語り、さらなる収益の増加に自信をのぞかせる。
「アフィリエイトで儲ける限界を感じていたところだったし、私のサイトに広告を載せてくれるような事業者、代理店は怪しげな薬やグレーなアダルト広告ばかりで、ユーザーがクリックしたり購入してくれることはまずない。収益が上がらない状態が続いていました。最近だと仮想通貨事業者の広告ばかりで、これもほとんど収益の増加は見込まれない。それに引きかえ、来訪ユーザーに仮想通貨の”マイニング”をさせる、といった方法は効率的で、収益の大幅な増加が見込まれました。現在は、アフィリエイト広告とマイニングの二本柱で、以前の1.5倍ほどの収入があります」