行名から「東京」を外し、新年度のスタートを切った三菱UFJ銀行。持ち株会社・三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が3月30日に出したプレスリリースの、“興味深い記述”が関係者の間で話題となっている。
それは、今年7月から既存の相談役制度を廃止し、特別顧問制度を新たに設けると発表したもの。新設される特別顧問(年間報酬の上限2000万円)と名誉顧問(無報酬)について、〈必要に応じて、執務室(本社外)、社用車、秘書を利用することがあります〉と書かれていたのだ。
わざわざ括弧書きで執務室を「本社外」と明記したところに“意味”があると、経済ジャーナリストの森岡英樹氏が解説する。
「これまで、同行の頭取経験者たちは、相談役・特別顧問として個室・秘書・車の3点セットを与えられてきた。その個室が東京・丸の内にある本店の9階に並んでいました。現経営陣に影響力を行使できるとされる頭取経験者たちを指す隠語として、『本店9階』の呼称があったのです」
社長室など現経営陣の個室はひとつ下の8階にあり、元頭取たちの“天の声”の存在が指摘されてきた。日本特有の相談役制度には、外国人投資家からの批判が強く、近年は金融庁も問題視している。
「意思決定を透明化するガバナンス改革は世界の潮流。今回は、同行会長でMUFG社長の平野信行氏が強い意思をもって、『本店9階』との決別を宣言したということだろう。歴代頭取の本流である東大卒・企画畑出身ではなく、異色の“京大卒・国際畑出身”の経営トップである平野氏だからできたことだといわれています」(森岡氏)