日本国の中央銀行、日本銀行は行政機関では無いものの、金融政策については行政の範疇にあるとみられており、その決定は政財界に大きな影響力を及ぼす。経営コンサルタントの大前研一氏が、続投が決まった黒田東彦総裁により、日本経済の未来がどう変わるかについて解説する。
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日本銀行の黒田東彦総裁が再任された。日銀総裁を2期連続で務めるのは1961年に再任された第20代の山際正道総裁(やまぎわまさみち、1956~1964年)以来57年ぶりで、任期は2023年までの5年間。黒田総裁が任期満了まで務めれば、在任期間は一万田尚登総裁(いちまだひさと、1946~1954年)を超えて歴代最長となる。
本来、日銀は政府から距離を置いて独自に金融政策の舵取りをすべきなのに、安倍首相の肝煎りで起用され、「アベノミクス」の柱である異次元金融緩和を継続してきた黒田総裁がさらに5年も続投するというのは異常事態だ。
ところが、新聞・テレビはこの異例の人事をおおむね肯定的に報道している。これは全く理解不能だ。日銀は「物価上昇率2%」を目標に掲げ、2019年頃に実現できるとしているが、これまでに達成時期を6回も延期している。にもかかわらず、馬鹿の一つ覚えのように国債やETF(上場投資信託)を買うだけだ。そんな「異次元」の金融緩和をしても、この5年間の物価上昇率は原油などエネルギー価格の影響を除くと、ほとんど変わっていない。
結局、黒田総裁やその取り巻きは、20世紀の古い経済学に基づいた金融政策しか議論していないから間違えるのだ。実際に庶民の目から見て、どこにどんな需要があり、それがどう変化しているのか、20代の若者が70代の高齢者より出不精になっている時代にどんな政策が有効なのか、といったことを全く考えず、若い頃に学んだ経済理論を振り回して金利とマネタリーベース(資金供給量)をいじっているだけである。