国内

負担が重いPTA役員、人間関係も悪化する危険な状況に

想像以上に荷が重いPTA活動

 ソメイヨシノの咲いた校門を息子とくぐり、万感の思いで迎えた小学校の入学式。緊張した面持ちで校長先生の挨拶を聞くわが子の姿に、新たな門出を実感していた茨城県在住のAさん(42才・保険会社勤務)は、式典の後、一転して暗い気持ちになった。

「保護者だけ体育館に残されて、PTA活動の説明と役員決めが始まったんです。壇上にいるPTA会長の女性が定例会議の日程や、放課後の校庭見守り活動や広報誌の作成などの仕事について延々と説明して、『はい、じゃあ役員を決めましょう』と。“ちょっと待ってよ!”という感じでした」(Aさん)

 Aさんのクラスには役員に立候補する保護者がおらず、急きょくじ引きで決めることになった。全員が不安げな表情を浮かべて静まりかえるなか、粛々とくじが引かれていく。入学式の感動はとっくに消え失せていた。

「幸いなことに私は当たりませんでしたが、当たってしまったお母さんの呆然とした顔が忘れられません。そもそもPTAって強制加入の団体じゃないんですよね。私のように毎日働いている人間には時間的にも難しいし、当たり前に全員参加になっているのもおかしい。この前時代的な組織は一体何なのでしょうか」

 4月初旬、全国各地で入学式のシーズンがやって来た。子供にとっては晴れ舞台のこの季節、毎年保護者の頭を悩ませているのがPTA問題だ。昔から母親にとって負担の大きいPTAだが、とりわけ最近は「入会をめぐるトラブル」が続出している。

 発端は昨年3月、ツイッターに投稿された「♯PTAやめたの私だ」というハッシュタグだった。女性同士の人間関係トラブルや無駄に長い会議など、PTA活動に悩む母親たちが退会するまでのプロセスを思い思いに綴り、各メディアに取り上げられる騒動となった。PTA問題に詳しいジャーナリストの大塚玲子さんが指摘する。

「共働きが増えた今、昼間の活動が多いPTAは時代に即していません。そもそもPTAは全員参加ではなく任意加入の組織でありながら、これまで入会することが当たり前とされてきました。『#PTAやめたの私だ』騒動をきっかけに、“強制力はないので参加しなくてもいい”という事実が広まる一方、“やらない人は許さない”との風潮も根強くなり、両者の対立が深まっています」

 保護者と学校の“相互援助組織”はどこへ向かい、何を目指すのか──。

◆この間のバザーに参加していませんでしたけど、何かあったんですか?

 PTAに詳しい文化学園大学現代文化学部の加藤薫教授が語る。

「本来の位置づけは、『児童生徒の幸せのために必要な法律や規則や施設をつくることを国や公共団体に働きかける団体』で、GHQはPTAが民主主義の推進に大きな役割を果たすことを期待したのです。戦後、PTAはあっという間に全国の学校に広がりましたが、残念ながら、保護者が自発的に参加する組織にはなりませんでした」

 PTAは任意加入団体にもかかわらず、保護者が当たり前のように全員入会するのは、組織の出発点が「上から降りてきた」点にある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン