今後30年以内に70%の確率で起こると予測される「首都直下型地震」。その“中心地”である東京都が3月29日に突如公表したレポートが、大きな波紋を呼んでいる。
震度6強の地震で“倒壊の危険性あり”と指摘された建築物(公表対象の852棟のうち、251棟)には、渋谷のシンボルともいえる「SHIBUYA109(道玄坂共同ビル)」や、サラリーマンの聖地と呼ばれる「ニュー新橋ビル」など古くから親しまれ、多くの人が訪れる商業ビルも含まれていたからだ。
今回、名前が挙がったビルや病院を取材したところ、多くの担当者から2つの疑問が上がった。ひとつは、「なぜこの時期の公表だったのか」。もうひとつは、「そもそも今回の耐震診断評価は適切なのか」だ。東京都都市整備局・市街地建築部建築企画課は、公表の時期について「特別な意図はない」と説明し、こう続ける。
「緊急輸送道路沿道建築物についての報告期限は、2015年3月末で、大規模建築物についての報告期限は、同年12月末でした。そこから、取りまとめと確認作業を行なったため、この時期の発表になりました」
また、分析指標に対して、「SRF工法などの部分改修の補強成果が反映されていない」という声が複数上がったが、それに対してはこう回答した。
「今回、都が発表した耐震診断は、建物の一部ではなく全体の強度を評価しています。SRF工法など部分的な補強工事を行なった後、再度、耐震診断を受ければ、Is値(※注/地震の揺れに耐える総合的な力を数値化したもの)が上がることは十分考えられます。公表については、所有者に耐震の必要性を改めて認識していただき、耐震化を進めることを目的としています」(同前)
では、実際の“危険度”はどう考えればいいのか。一級建築士で建築エコノミストの森山高至氏はこう語る。