◆民泊・風俗営業
民泊を防ぐためには管理組合で管理規約を改正することが第一だ。それで民泊行為は旅館業法の違法行為となる。しかし、それで万全かというとそうでもない。現行の区分所有法では、区分所有者の権利を厚く守り過ぎている。
まず、管理規約に違反して民泊運用を続けている区分所有者が出現したとしよう。区分所有者の中には、法律ではない私的な契約である管理規約に違反することなど、躊躇しないモンスターだって時にはいる。
では、そうなった場合に管理組合としては何ができるのか。まず、区分所有法6条1項は以下のように定めている。
〈区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない〉
民泊は「区分所有者の共同の利益に反する行為」であるのか? ここで法律的な議論をしても仕方がないので、仮にそうだとしよう。その場合、管理組合には何ができるのか。区分所有法では57条から60条に「義務違反者に対する措置」を定めている。内容はやや複雑なので簡単にまとめると、大きく3つの段階に分かれている。
(1)行為の停止…民泊をやめさせる
(2)使用の停止…その区分所有者にその住戸を使用させない
(3)競売の請求…区分所有権をはく奪する
(1)の「行為の停止」を裁判所に求める場合は、管理組合の普通決議で可能だ。(2)の「使用の停止」を求める訴訟は「特別決議(4分の3の賛成)」が必要。(3)の「競売の請求」も特別決議が必要。こういった場合、管理組合は裁判を行うことになる。だが、今のところ管理規約に違反して民泊行為を続けた区分所有者を裁判で訴えても、競売の判決が出るとは限らない。
マンションの区分所有権は、基本的に私有財産である。日本国憲法では、国民の私有財産権が守られることが明解に規定されている。したがって、マンションの区分所有権はよほどのことがない限り、はく奪されることはない、と考えるべきだろう。管理規約に違反して民泊を続けたとしても、せいぜい「行為の停止」ではないだろうか。
風俗営業などの場合なら、もう少し厳しい判決は取れそうである。ただ、風俗営業を行っている住人は、モンスター的にふるまうよりもビジネスを優先しそうなので、裁判までしなくても解決はできるはずだ。その営業内容が違法なら、警察に訴えることも可能である。
このように、マンション内のモンスター居住者に対して「こうすれば解決」というノウハウがどこかにある、ということはない。マンションというのは、ある意味人間の集団と同じだ。人間関係で発生するあらゆるトラブルはマンション内でも起こり得る。
大切なのは、問題の本質を見極めて冷静に対処することだ。やむなく法律を使う場合には、必ずマンション問題に手慣れた弁護士に相談すべきだろう。それはマンション管理士やコンサルタントの仕事ではない。彼らが有料でそういったことに対応すれば、それ自体が非弁という違法行為になることを付け加えておきたい。