市場は常に変遷するものだが、酒類の業界をとってみても10年前は「ひと昔」だ。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。
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「若者(もしくは日本人)の酒離れ」が叫ばれて久しい。確かに毎年行われる総務省の家計調査でも、「酒類」への支出は、10年前の2007年の調査結果では年間3万9358円だったのが、最新の2017年では3万5896円と1割近く減った。とりわけ、清酒はこの10年で6407円から5218円と2割近く、焼酎も6204円から5654円と1割近く減っている。
もっともだからといって、即「若者(もしくは日本人)の酒離れ」を声高に叫ぶのにも違和感がある。この10年で明らかに伸びている酒類もあるからだ。
伸びが顕著なのが洋酒、とりわけウイスキーだ。10年前の家計調査では年間1085円だったのが、1556円と4割以上も伸びている。ワインも2308円(当時の項目はぶどう酒)から2718円と2割近い伸び、当時とは区分が違うものの「チューハイ・カクテル」と「他の酒」 の合計も3065円から3342円と1割近く増えている。
2016年から2017年にかけての比較で見ても、長らく減少傾向が続いていたビールが9772円から9974円とわずかながら支出が増加。もちろんウイスキーも続伸している。
背景には「ハイボール市場」の拡大がある。とりわけ好調なのが「Ready To
Drink」と言われる「フタを開けてすぐ飲める飲料」──すなわちハイボールや缶チューハイ市場の拡大だ。サントリーは3月に発表した「RTDレポート2018」内で2017年のRTD市場が対前年比109%で伸長し、10年連続で前年超え。過去最大の市場規模に発展したと発表した。今年も引き続き同程度の伸びが見込まれるという。
同社の「角ハイボール缶」は前年比27%増の1402万ケースと圧倒的な売れ行きで市場をけん引している。高アルコール飲料市場も各社がアルコール度数6~7%の「第3のビール」を次々に投入。昨年7月に度数7%の「頂(いただき)」を発売したサントリーは今年2月には早くも8%にリニューアルしたアイテムを発売した。