国内

財務次官セクハラ騒動 麻生大臣の「計算」は極めて示唆に富む

財務省の福田淳一事務次官(時事通信フォト)

 組織のなかで生きる以上、不慮の事態に遭遇することはままある。そこでの振る舞いが評価につながることも少なくない。コラムニストの石原壮一郎氏が、財務省を襲った未曾有の事態について指摘する。

 * * *
 現役の大臣であり元首相に向かってこういう言い方は失礼ですが、本当にたいしたものです。何が起きてもあそこまで尊大な態度を貫くというのは、並の人間にはできません。文書改竄の問題でも持ち味を遺憾なく発揮してくれましたが、新たに出てきた事務次官のセクハラ問題でも、聞くものに無駄に余分な感情を抱かせる麻生節は健在です。

 12日発売の「週刊新潮」が、財務省の事務方の長である福田淳一事務次官が、複数の女性記者に対してセクハラ発言をしていたと報じました。記事によると、飲食店で女性記者に「おっぱい触っていい?」といったトホホな発言を繰り返していたそうです。

 こうした発言があったのは、国会で森友学園に関する追及が続いていた時期と重なるとのこと。女性記者としては大事な取材源ですから、いくら失礼なことを言われても、そう簡単に怒りをあらわにすることはできません。典型的なセクハラの構図です。

 財務省への風当たりが強くなっているだけに、トップのスキャンダル記事が出ることは、財務省としても上司である麻生太郎財務相としても、さぞ頭が痛いことでしょう。しかし、麻生大臣はそう簡単に部下を切り捨てるような人ではありませんでした。

 第一報が出た直後は、福田氏から「ひとつひとつのやりとりは定かではなく、確認しようもない。誤解を受けることのないよう気をつけて参りたい」という釈明があり、「いまおかれている状況を考えて、緊張感をもって行動しなければいけない」と注意したとか。野党側は処分を求めましたが「十分な反省があった」「訓戒を述べたことで十分だと思っている」「長い間の実績を踏まえれば、あの一点をもって能力に欠けるという判断をしているわけではない」などと、事実関係の確認も処分もする気はないという方針を示しました。

 会社において、部下による限りなく黒に近い疑惑が発覚したときも、簡単に切り捨てると「冷たい上司」という印象を与えそうです。一度は「本人も十分に反省している」「俺のほうからもしっかり注意しておいた」「これまでの彼の活躍を踏まえれば、それだけで能力に欠けると判断することはできない」「彼を信じている」てなことを言って、いちおうかばってあげるのが得策。あとになって、やっぱり黒だったと判明しても、自分自身が悪いことをしたわけではないので、こっちはたいして批判されません。

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン
東日本大震災発生時、ブルーインパルスは松島基地を離れていた(時事通信フォト)
《津波警報で避難は?》3.11で難を逃れた「ブルーインパルス」現在の居場所は…本日の飛行訓練はキャンセル
NEWSポストセブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
宮城県気仙沼市では注意報が警報に変わり、津波予想も1メートルから3メートルに
「街中にサイレンが鳴り響き…」宮城・気仙沼市に旅行中の男性が語る“緊迫の朝” 「一時はネットもつながらず焦った」《日本全国で津波警報》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
夜の街での男女トラブルは社会問題でもある(写真はイメージ/Getty)
「整形費用返済のために…」現役アイドルがメンズエステ店で働くことになったきっかけ、“ストーカー化した”客から逃れるために契約した「格安スマホ」
NEWSポストセブン
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト