近ごろの新入社員の特徴を聞かれ、「マイペースで会社への忠誠心や同僚との協調性に欠ける」と愚痴をこぼす上司は多いだろう。だが、自由奔放で自発的に行動できる新人を“ネコ型”と呼び、これからの時代に必要な人材だと指摘する向きもある。『「ネコ型」人間の時代──直感こそAIに勝る』(平凡社新書)を上梓した同志社大学政策学部教授の太田肇氏だ。
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気が向いた仕事にはのめり込むが、興味がなければやろうとしない。調子に乗ると先輩やお客さんにもタメ口で話し、周りをハラハラさせる。上司や同僚が忙しそうに働いていてもお構いなく定時に帰る。入社早々、友人と旅行に行くからと有給休暇を申請してくる。けれども頭の回転は速く、けっこう仕事ができる。派閥争いには加わらず、いつもマイペースだが意外と人に好かれる──。
組織への忠誠心や協調性には少々欠けるものの、感性や直感が鋭く、行動力・瞬発力がある。そういうタイプの人を、私は「ネコ型」人間と呼んでいる。いわゆる「ゆとり教育」を受けた若者のなかから、かつての「新人類」や「オタク族」、「宇宙人」などとは一味違う「ネコ型」の新人が続々と誕生し、異彩を放っている。
良きにつけ悪しきにつけ、これまでの枠にはまらない彼らをどう扱ったらよいか、戸惑っている人も多いのではなかろうか。
◆出番を失った「イヌ型」
日本の企業社会ではこれまで組織や上司に忠実で、しっかり序列を守る「イヌ型」人間が求められ、重用されてきた。それに対し「ネコ型」人間は歓迎されず、組織のなかでも傍流に追いやられるのが常だった。伝統的な工業社会、安定した経営環境のもとでは、それはやむをえなかった。
ところが急速なIT化により、状況が一変しつつある。
「イヌ型」は決まった仕事は着実にこなし、命じられたことは忠実に守るが、自分で判断して行動することは苦手だ。そのため、想定外の事態に対処できない。
いまやオフィスでも、製造や販売の現場でも、決まったとおりの仕事は大半が機械やコンピュータに取って代わられようとしている。人間の出番は「想定外」の事態が起きたときだけ、といっても過言ではない。その結果、「イヌ型」は活躍の場を失ったのだ。
そればかりか、いま問題になっている官僚の相次ぐ不祥事をはじめ、官庁や大企業で組織的な不祥事を引き起こすのは、たいてい「イヌ型」人間だ。彼らは上役の顔色をうかがい、忖度する習性が身についている。既得権や慣例にこだわり、改革に抵抗するのも「イヌ型」である。
一方、「ネコ型」人間の持ち味である直感や遊び感覚はITに代替されないばかりか、ITの力によって世界中に伝播する。上下関係ではなく、メンバーや顧客とフラットな関係で仕事ができるのも「ネコ型」の強みだ。