そんな中、去る4月9日に西武鉄道池袋ビル(仮称)の上棟式が行われた(竣工は2019年3月の予定)。現在、西武HDの本社は西武池袋線、新宿線の結節点になっている所沢駅近くにあるが、この池袋ビル竣工後は、西武HD、プリンスホテル、それに不動産開発を手がける西武プロパティーズの3社が同ビルに本社を移転する(西武鉄道は所沢本社のまま)。
西武鉄道池袋ビルは地上20階建てでオフィスは15フロア(フロア当たりは640坪)あり、うち5フロアを西武グループで使用、残る10フロアを外部企業に貸し出して家賃収入を得る。
上棟式後の囲み取材で後藤氏は、「いろいろな企業から引き合いはありますが、まだテナントは決まっていません。いずれにせよ、不動産事業はグループの成長を考えるうえで、今後の大きな鍵という位置づけをしています」と語っていた。
実際、今後もプリンス系ホテルがある芝公園エリアや高輪・品川エリアでの再開発が視野に入っており、以前、東京都から土地買収の打診を受けていた、遊園地のとしまえんをどうしていくかも気になるところだ。さらに西武HDの場合、横浜八景島シーパラダイスを擁するほか、2017年3月には横浜アリーナの株式も取得し、株の持ち合いをしている京浜急行電鉄との、鉄道やそれ以外の事業での連携の行方なども注目点といえる。
一方で、もちろん沿線開発も大事。かつて、西武グループ総帥だった堤義明氏が牽引していた頃は、観光地でのスキー場やゴルフ場開発、プリンスホテルの建設などに軸足が置かれ、沿線開発はないに等しかった。
1999年に屋根付きの西武ドームに球場が生まれ変わったが、西武沿線の風景は旧態依然のまま。2005年に後藤氏が西武鉄道社長(西武HD社長は2006年から)に着任してから、ようやく沿線開発に着手し、高架化や高架下施設、駅ナカ施設の充実、駅舎の改築などを進めてきた。
冒頭で触れたメットライフドームと周辺の大改修は、西武沿線外の広域からの集客という点では、所沢というロケーション上なかなか厳しいが、沿線住民の集客という観点では成果を上げるだろう。