サッカーW杯開催2か月前の監督解任は世界でも例がない。無謀にしか見えない賭けに出なければならないほど、日本サッカー協会は追い込まれていた。複数の主力選手が戦術に対する意見を出し合い、集約して協会に伝えたり、ヴァヒド・ハリルホジッチ監督に戦術転換を直談判したこともあった。だが、意見のすれ違いは続き、いずれも実を結ばなかった。
そして、ベルギー遠征でのウクライナ戦(3月27日/1-2で敗北)後、これまでどんな不調の時でもマスコミ対応を欠かさなかった本田圭佑は、記者らの質問に無言のまま所属チームのあるメキシコに向け、機上の人となった。
「試合後の記者対応は選手個人の裁量というより、協会とメディアの約束事として行なわれている。それを拒否したのは、マスコミから逃げたというより、協会に対する抗議に映った」(スポーツ紙記者)
選手の間では、協会に対する不信感まで渦巻いていったのだ。
「協会は事態を打開するため急遽、全選手にヒアリングを実施しました。ハリルホジッチ監督を支持する声も一部ではあったが、ほとんどが批判的だったようです。この時期で選手が一枚岩になれていない状況を危惧した協会は、“解任やむなし”との結論に至った」(サッカー協会関係者)
一方で、ハリル監督にとっては予想外の解任だった。「契約解除に伴う手続きもおざなりだった」とサッカー協会を批判し、「ハリルが訴訟を準備か」と報じる海外メディアもあった。