「アクセルとブレーキを間違えた」や「突然の暴走」など、高齢ドライバーの交通事故増加を受け、昨年3月の道路交通法改正で75歳以上には免許更新時の認知機能検査が義務づけられた。
だが、最終的に「運転する権利を取り上げるかどうか」を判断するのは国交省の役人でも警察官でもない。民間の医師たちだ。彼らにとって、その葛藤は深まるばかりだという。
◆異例の声明
4月4日、日本医師会が定例記者会見で、改正道交法について、“医師の訴訟リスクの解消”を求める答申を発表した。
同法が規定する認知機能検査で「49点未満」の人は認知症の疑いがある「第1分類」と判定され、免許更新に医師の診断書の提出が必要になる。
そこで医師が「認知症で運転するのは危険」と判断すれば免許は取り消しになる。「認知症ではない」と判断された高齢ドライバーは免許更新が認められ、これまで通りハンドルを握ることができる。実に“合理的な規定”だが、医師にとっては不条理な問題なのだという。交通事故裁判に詳しい星野・長塚・木川法律事務所の星野宏明弁護士が解説する。