少子高齢化や過疎化に伴う地方の衰退は、日本が抱える深刻な問題といわれて久しいが、その解決策はなかなか見出せない。ジャーナリストの竹中明洋氏が、この問題の解消に向け、新しい取り組みを始めた地域に密着した。
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農林水産省の農林水産政策研究所がまとめた「食料品アクセス問題と高齢者の健康」によれば、自宅から半径500メートル以内に生鮮食料品店がなく、しかも自動車を保有していない65歳以上の高齢者の数は、2025年には598万人にまで増加する見通しだ。
いわゆる「買い物弱者」問題である。
長野県といえば日本一の長寿県として知られるが、北アルプスや中央アルプスに囲まれた地形のために移動手段を自家用車に頼らざるを得ない町村が多い。
県が2010年に実施した調査では、県内の65歳以上の高齢者のうち「買い物に不便を感じている」という人は、19万3000人から23万1000人にも上るという。内陸の長寿県であるがゆえに起きたジレンマだが、そんな状況を打開しようと動き出した地域がある。
その“拠点”となるのが長野県南部の飯島町にある「道の駅田切の里」だ。