3年前の冬、都内に暮らす主婦の高橋ゆきえさん(仮名・46才)は、当時高校3年生だった娘の美緒さんから衝撃的な一言を告げられた。
「実は妊娠しちゃったんだよね…」
3学期が始まったばかりの頃、美緒さんが体調不良を訴え、学校を休む日が続いたため、理由を問いただしたところ、告白されたという。
「相手は1才年上のフリーターの男性でした。娘にとって初めての彼氏で、避妊もせずに行為に至り、妊娠してしまったようです。聞いた瞬間は“嘘だと言って!”と目の前が真っ暗に。家族会議を何度も重ねたのですが、普段は自分の意見をあまり言わない優柔不断な娘が“絶対に産みたい”と譲らなかった。その姿を見て、親として応援すべきではないかと思ったんです」(高橋さん)
このとき、美緒さんはすでに妊娠7か月。中絶できる時期はすぎていた。高橋さん親子はすぐさま学校に相談した。
「“学校内で何か事故があったり、体調が急変したら、娘さんにとって最善とはいえない”と、自主退学を勧められました。覚えているのは、先生が“娘さんのことを思えば”と繰り返しおっしゃっていたことです。でも今考えると、高3の2学期までは通っていたのだから、休学して復学できるような提案など、別の方法は探れなかったのかな、と思うところはあります」(高橋さん)
結局、美緒さんは高校を中退。彼とは結婚することなく、桜が咲く頃、元気な女の子を産んだ。
高橋さん親子の話は決して他人事ではない。岩手県に住む相葉あやかさん(仮名・25才)。彼女もまた、高校3年の12月に妊娠が発覚した。学校との話し合いの結果、自主退学して出産という道を選択した。
「妊娠発覚の少し前から親と仲違いをして、精神的に不安定になっていて、学校を休みがちでした。当時は“もういいや”って勢いで中退しちゃいました。でも、今思うと、親にはやはり申し訳なかったですね。もうちょっと待てば卒業できたのにな、って」
◆妊娠した子を特別扱いはできない
3月30日、文部科学省は女子高校生の妊娠について初の実態調査(『妊娠した高校生の在籍状況2015~2016年度』)を公表した。
それによれば、全国の公立高校(3571校)が把握している妊娠は2098件。うち3割(674件)が自主退学していた。しかも自主退学の中には学校の勧めによるものが32件あったという。