激しく感情を揺さぶられ、魂を奪われる──。4月8日から神奈川・横浜のKAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉で上演されている『ノートルダムの鐘』(劇団四季公演)。文豪ヴィクトル・ユゴーの同名作品を原作とした重厚な人間ドラマだ。本誌・週刊ポストはそんな作品の舞台裏に密着した。
3月29日に訪れたのは劇団の稽古場。開幕目前のこの日、舞台セットも一部取り入れて、通しで稽古が行なわれた。
とはいえ、運び込まれたのは木枠や長椅子。一見しただけではどんな空間か想像がつかないほど簡素だが、俳優が演じはじめると、不思議と背後に大聖堂の鐘楼やパリの街の喧騒が感じられる。
独自の発声メソッドを持つ四季の舞台は台詞の明瞭さに定評があるが、それは稽古から徹底している。本番さながらの力強さで俳優たちは台詞を発していた。
開幕前日には公開舞台稽古が劇場で行なわれた。舞台空間をフルに使って組まれた壮大なセットは一瞬にして観客を中世のパリへ引き込み、俳優は汗を滴らせて熱演した。
支配階級の宗教者、社会で不当な扱いを受けているジプシー、周囲から醜いと蔑まれる者がそれぞれの宿命を背負ってもがき苦しみ、葛藤する物語。ディズニーと組んだ従来の作品とは一線を画すが、劇団四季代表取締役社長の吉田智誉樹氏は、「米国で舞台を観て、なんとしても日本で上演したいと思った」と語る。