近年、会社と社員の関係が変化しているという。社内の飲み会を筆頭にして休日の映画上映会やスポーツ大会などの社員参加のイベントを行ったり、独身寮を復活させたりするなど、会社の“家族回帰”が進んでいるのだ。
産労総合研究所が2014年に2000社を対象に行った調査によれば、「新しい行事を始めた」と答えた企業は47.1%、「行事を復活させた」と答えた企業は29.1%にのぼった。
たとえば、KDDIでは2014年に社内運動会を実施して好評を博した。また、モバイルゲームを製作・販売する株式会社アカツキでも年に1回の沖縄旅行を実施。心待ちにする社員が多いという。
2013年に放映された『ショムニ2013』(フジテレビ系)では社内の親睦会や卓球大会を楽しむOLたちの姿が描かれている。2014年に放映されたドラマ『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系)でも、アルバイトや事務員、営業が一丸となって問題を解決したり、課長が父親のように主人公の恋愛事情を心配したりと、家族のような温かなつながりが生まれていた。『きょうは会社休みます。』のほか、『ハケンの品格』(2007年)でもプロデューサーを務めた日本テレビの櫨山(はぜやま)裕子さんが言う。
「(『ハケンの品格』で描かれた)“ハケンショック”から7年経って、会社に対する過剰な幻想が消えたと同時に、よくも悪くも新しい働き方が受け入れられてきた。何があっても守ってくれる会社のもと、一丸となってがんばろうとしていた時代が終わり、それぞれが淡々と自分のスキルを高めることを求められた。そして今、お互いを承認し合いながら対等な関係で働いた方が、気持ちよく働けて効率も上がるのだと気がついたのです」
家族回帰の代表例が、「子連れ出勤」OKの会社として知られる、体験ギフトの企画販売を手がけるソウ・エクスペリエンス株式会社だ。母親や父親に連れられて同社オフィスにやって来る子供たちを社員全員が見守るシステムで、社内の一角にはキッズスペースが設置される。お気に入りの社員のひざの上で赤ちゃんがすやすやと眠ることもしばしばだ。