北朝鮮の「微笑み外交」に乗じても、何ら果実を得られないことは、歴史が証明している。核は金正恩体制の命綱である。それを放棄するはずはない。にもかかわらず、なぜ北朝鮮の術中に、文在寅政権は自ら嵌まるのか。韓国人ジャーナリスト・朴承ミン氏が深層を読む。
* * *
親北政策に突き進む背景として最初に挙げなければいけないのは、青瓦台(大統領府)の秘書官(参謀陣)の面々である。文在寅大統領の秘書官のうち半数近くを占めるのが「586グループ」だ。
現在50代で、1980年代に大学時代を送って、1960年代に生まれた世代を指す。彼らは80年代に盛んだった民主化運動、つまり反政府学生運動に参加していた人間だ。学生運動時代に金日成主体思想に傾倒していた者もいる。
与党、共に民主党(民主党)でも586グループが重要なポストの約8割を掌握している。文大統領自体も大学時代に学生運動に勤しんでおり、586グループの先輩格にあたる。“後輩”の意見を反映させることを当然のように思っているかもしれない。
もちろん、文大統領自身の野心もそこにはある。歴代大統領は、南北首脳会談に強い関心を示してきた。文大統領が系譜を継ぐ左派政権、2000年の金大中政権、2007年の盧武鉉政権もそれを実現した。文大統領も業績を上げる機会として狙っているのだろう。
それにしても、現政権が北朝鮮に気を使う様は度を超している。その象徴が、歴史教科書改定だ。