角界には、明文化されていない“決まり”が数多くある。結果、問題が起きたり、スキャンダルが発覚したりしても、原因と責任の所在がわかりにくい。
昨年11月の横綱・日馬富士(当時)による同郷の後輩・貴ノ岩への殴打事件の発覚を皮切りに相次いで明らかになった暴力事件にしても、背景にあるのは力士の厳しい「上下関係」という不文律だ。
「食事や風呂など、部屋ではすべてが番付順。ちゃんこにしても、兄弟子たちが食べた後にほとんど具が残っていない残り汁をご飯にぶっ掛けてかき込んだ経験は、誰しもある。悔しかったら偉くなるしかない」(ベテラン力士)という世界だ。
その序列は衣食住の多岐にわたる。十両になって初めて紋付きの羽織袴の着用が許され、幕内に昇進すると四股名入りの「染め抜き」(特注の着流し)を着ることができる。
「移動手段も、幕下以下の力士は電車などの公共交通機関のみ。十両以上はタクシーの利用が認められるようになる」(若手親方)
さらにそれを歪にするのが十両以上に割り当てられる「付け人」の存在だ。