詠美さんは本誌インタビューでも「端から端まで週刊誌を読みます」と公言している。『吉祥寺デイズ』には、世間を騒がせたゴシップやスキャンダルの話題が度々登場するが、それだけではない。「だって、経験なんてもちろんないのに、時には殺人事件について書かなきゃいけないんだから」と語ってもいた。日経新聞夕刊で連載中の小説「つみびと」は、親による虐待、育児放棄をテーマにしていることを考えても、雑誌を読む時間が「気が散った時のため」だけではないのがわかる。
◆原稿はサインペンで綴る
そして話は原稿用紙に直筆で綴った『吉祥寺デイズ』のあとがきへ。
杏:ビックリしたのが、手書きなんですよね。
詠美:そうです。今は結構珍しいって感じで。編集者は大変かなって思うんですけど(笑い)。
大倉:枡目い~っぱいに書くんですよね。
詠美:そうなんです。だから割と読みやすいかなと思うんですけど。
杏:すごい読みやすいです!
大倉:ぼくが最初に感じたのは、コピーライターの字に似ているなと。と同時に、ぼくが大好きな中上健次の字に似ているなと思って。
詠美:あー、あの人は集計用紙にびっしり書いていますよね。
大倉:書いていますよね。そこにいろいろ校正する時に、めちゃくちゃな入れ方をしているので。
詠美:私のはほとんど直しもないので、読みやすいと思います(笑い)。
大倉:えっ!? 一度書くと、もう直しを入れないタイプなんですか。
詠美:だから机に座るまで時間がかかるんですよ。
杏:これはペンですか?
詠美:サインペンです。
杏:サインペンなんだ。すごーい!!
詠美:だから水をこぼしたら終わりなんです(笑い)。
杏&大倉:うわー!!(笑い)
杏:原稿用紙はこれ、みたいなのはあるんですか?
詠美:編集者に持ち回りでプレゼントしてもらっています。色がついていて、400字詰めのA4サイズのものなんですけど。端っこに「ヘイ、ブラザー」か「ラブ&ピース」のどっちかが書いてあります。
大倉:(笑い)そうでないと、気が乗らないってことなんですか?
詠美:まあ…そうでもないんですけど、忖度(笑い)。
◆執筆中に音楽は聴かない
大倉:先程、(執筆は)何もない部屋でとおっしゃっていましたが、音楽も聴かないんですか?
詠美:全く聴かないですね。むしろ音楽とか音とかが全然ダメなので。水道の水が垂れる音でもダメですね。特に音楽が嫌かもしれない。自分で文章のリズムとかで、書いている時に作曲するような感じが来る時があるんですけど、そういう時、音楽は本当に邪魔なので。
杏:(執筆は)3時間くらいとおっしゃっていたんですけど、乗りに乗っちゃって、ずっといたということもあるんですか?