偏頭痛持ちのAさん(60代男性)は昨年の2月、友人と趣味のカラオケを楽しんでいる最中に普段とは違う頭痛が起きたという。
「いつもの“ジンジン”とした痛みではなく、“ゴーンゴーン”と頭の中で鐘が鳴っているような、痛みというよりは違和感に近いようなものでした。そのうえ吐き気も止まらなかったので、カラオケを中断して家に帰り、熱を測ってみたのですが、平熱だった。なんだか気味が悪くなったのでタクシーで病院へ向かったんです」
CTなどの精密検査を受けた後Aさんは、意外な診断結果に驚いた。
「くも膜下出血でした。『バットで“ガツン”と殴られたような痛み』と聞いたことがあったのですが、全くピンと来ませんでした。医者の話では初期症状とピッタリ一致していたらしくて……。すぐにカテーテル手術を受けて、事なきを得ました」
Aさんのように、くも膜下出血は激痛を伴うケースが大半だ。が、約20%の割合で「マイナーリーク」と呼ばれる“大出血の予兆”が生じることが研究から分かってきている。くどうちあき脳神経外科クリニック理事長の工藤千秋医師の話。
「『マイナーリーク』とは脳動脈からわずかに血液が漏れる症状を指します。風邪によく似た頭痛と吐き気を伴うのですが、鼻水や咳、熱が全く出ないことが特徴です」
何回も“ガツンガツンガツン”と激痛が繰り返される場合には、くも膜下出血だけでなく「細菌やウイルス感染により脳内に炎症が起こる髄膜炎の疑いもある」(同前)という。激痛の他に、吐き気、意識の低下、発熱などを伴う。
痛みは強くなくても、起床時に吐き気とともに“ガンガン”とした頭痛があると脳腫瘍が疑われる。