「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表


──そもそもギャンブル依存症になりやすいタイプや性格などはあるのか。

田中:依存症問題を考える会を発足して以降、いろんな人を見てきましたけど、結果的にこういうタイプが依存症になるという共通点はありません。人によって置かれている環境も違いますしね。

 ただ、たとえば日常生活に何の不満もなく、仕事が順調だったとしても、何かの拍子にパワハラ上司と仕事をすることになったり、不本意な部署に異動させられたり、閑職に追いやられたりすることはありますよね。そうしたストレスを抱えたときにギャンブルが入り込んでくると依存症になりやすいとはいえるでしょうね。

 そこまでストレスがなくても、長年やっていた習い事を卒業したとか、地方転勤や定年退職で時間が空いたとか、環境の変化によってもなりやすい。つまり、誰の心にでも入り込んでしまう恐れがあるのです。

──田中さんの場合、OL時代の仕事は順調で忙しく、稼ぎも良かったそうだが、それでも依存症になってしまったのはなぜか。

田中:夫が大のギャンブル好きだったということもありますが、もともと私は代々ギャンブル好きの家系で育ち、常に賭け事が身近な環境にあったので、遺伝的な要素も関係していると思います。アメリカではギャンブル依存症の遺伝子が発見されたという話もありますしね。

 ただ、ギャンブルによる借金で貧困になり、両親が離婚したりする中で、「お前がいると金がかかる」と言われたり、そんなダメ人間にならないようにと、母親から過剰な期待をかけられることで、常に生きづらさを感じ、ずっと自分に自信が持てずにいました。

 そんな時、ギャンブル場に行くことで現実を忘れられました。競艇や競輪場に行けば、自分よりももっとひどいダメ人間がたくさんいる(笑い)。でも、そんな人たちと会話をしているとなぜかホッとして、とても居心地がよかったんです。自分の居場所はここしかないとさえ思いました。

──いちばんギャンブルにのめり込んでいた時代の借金額はどのくらいか。

田中:海外のカジノなどに行くと使う金額も多いので、一晩で200万円近く負けたこともありましたよ。

 OL時代にコツコツ溜めていた預貯金や保険のお金もすべて崩して借金の返済に充てたりもしていたので総額は何ともいえませんが、私の借金は700万~800万円はあったと思います。夫にいたっては合計1500万円近く借金を抱えていたこともあります。それでも2人ともギャンブルはやめられず、しまいには夫婦で購入した家も売却していましたからね。そんな苦しい日々が10年続きました。

 借金を返すためのダブルワーク、トリプルワークは当たり前。働けど働けど一向に楽にならない生活に、いったい何をやっているんだろうという気持ちで一杯でした。

──そこまで生活がボロボロになっても、まだギャンブルで大勝ちすれば借金も取り戻せると考えていたのか。

田中:すべての借金をコツコツ返していくしかないという現実がどうしても受け入れられず、ただただ恐怖しかありませんでした。いつか大勝ちしてラクになるまでギャンブルをやり続けるしかない。歯を食いしばってでもギャンブルをやろうと(笑い)

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