国内

常磐線復旧へ 富岡町・夜ノ森駅のツツジ再生が本当のゴールだ

除染作業により多くの草木が刈り取られた夜ノ森駅

「花と緑あふれる町」福島県双葉郡富岡町の、町の木は桜、町の花はツツジだ。町の北に位置する「夜ノ森駅(よのもりえき)」は、ホーム両側いっぱいに咲くツツジで知られている。ところが、2011年3月に起きた福島第一原子力発電所事故によって、半世紀以上前から町民によって育まれてきたツツジの運命は変えられてしまった。夜ノ森駅を含む常磐線復旧のスケジュールが次々と発表されるなか、富岡町のシンボルとその行方について、ライターの小川裕夫氏がレポートする。

 * * *
 2011年の東日本大震災の発生から7年が経過し、各地では復興が続けられている。その成果もあって、多くの被災地では普段の生活を取り戻しつつある。

 しかし、常磐線の沿線はいまだに街の活気が戻ってきていない。東京の日暮里駅―宮城県の岩沼駅(運行系統上は、品川駅―仙台駅間)を結ぶ常磐線は、東日本大震災の地震や津波、そしてその後に起きた福島第一原発事故によって大きな影響を受けた。特に福島県内の被害は甚大だった。

 駅舎や線路が流出・崩壊して運行に支障をきたしたため、常磐線は福島県いわき駅より北側を運休した。

 歳月とともに、常磐線は復旧区間を拡大。現在は富岡駅-浪江駅間のみが運休している。現状の常磐線の線路は南北に分断されている。実質的に、常磐北線と常磐南線といった具合だ。

 常磐線は2020年までに全線を再開するメドが立ち、沿線の街にも少しずつ人が戻ってきている。“常磐北線”の小高駅前には、このほど芥川賞作家の柳美里さん書店を開店させた。町の復興が加速するとの期待が高まり、大きな話題を呼んでいる。

 このように常磐線と沿線の街の復興は、着実に進んでいる。南北に分断されていた常磐線がひとつにつながる日も近い。残った立ち入り禁止区域では、急ピッチで除染作業が進む。

 福島県富岡町内に位置する夜ノ森駅は、いまだ立ち入り禁止区域に指定されている。夜ノ森駅は線路が掘割に敷設されている構造になっており、駅舎は線路の東側にしかない。駅舎のある東側は立ち入り禁止区域のままだが、線路の西側は一足早く避難指示が解除された。そのため、駅前に足を踏み入れることはできないが、線路の西側から駅舎を眺めることは可能だ。

 東日本大震災以降、私は被災地に足しげく通った。2013年5月に夜ノ森駅を見るために立ち寄ろうとすると、駅に通じる道は閉鎖されていて近づくことは叶わなかった。

 このとき、夜ノ森駅を裏手から覗くと、まだ除染作業が始まっていなかったので鬱蒼とした緑と最盛期を過ぎたツツジに包まれていた。

 夜ノ森駅のホームや周辺は、ツツジが植栽されていることでも知られている。2002年にはツツジが咲き誇る景色が素晴らしいとの理由で、東北の駅百選にも選出された。ツツジが咲く光景は東日本大震災後も変わらなかったが、ホームに植えられた約6000株のツツジは除染作業で伐採された。

 富岡町役場の担当者は、こう話す。

「夜ノ森駅のホームに植えられているツツジは、遠方から見物客が訪れるほど人気があります。しかし、除染作業でツツジは伐採されることになりました。町では再植樹の計画を立てていますが、JR東日本とも話し合う必要があるので、まだ具体的な内容は詰めていません」

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン