米国で始まった女性の性的被害告発運動の「ミー・トゥ」が韓国で猖獗(しょうけつ)をきわめている。米国以外では韓国が最も盛んなのではないだろうか。芸能人、文化人、映画監督、スポーツ選手、学者・教授、経済人、政治家……あらゆる分野の著名人たちがヤリ玉に挙げられている。政治好きな国民だけに、政治情勢にも大きな影響を与えている。
文化人では著名な詩人の高銀氏が含まれているが、彼は韓国人としてノーベル文学賞の候補に何回も名前が挙げられてきた人物。ノーベル賞を渇望してやまない韓国国民にとって“希望の星”だった(唯一の受賞で金大中大統領のノーベル平和賞はあるが)。疑惑は女性編集者相手の“露出趣味”みたいなセクハラ問題。早速、教科書から作品が削除されることになり、ノーベル賞の夢も吹っ飛んでしまった。
ハイライトは何といっても政治家。とくに次世代の有力指導者で、日本の小泉進次郎氏のような存在だった忠清南道知事、安熙正氏の場合だ。文在寅大統領の後継者と目され左派・革新系の最有力者でモテ男だったが、公式秘書を務めていた女性から“不適切な性的関係”を暴露され、知事辞職に追い込まれた。彼女はパワハラ的に性関係を強要され続けてきたといい、安知事は合意だったと反論したが、世論はノー。彼も大統領の夢は吹っ飛んでしまった。
安熙正事件では余波が広がった。韓国では6月に統一地方選挙があるが、安熙正の後任として忠清南道知事選に名乗りを上げていた文政権の前秘書官も、複雑な女性関係を暴露され出馬断念に追い込まれてしまった。お陰で知事選で与党の苦戦は免れず、文政権への打撃は必至だ。