数々の名作を生み出してきたNHK大河ドラマは、いつの時代も国民の話題の中心であった。『西郷どん』の時代考証を務める歴史学者・磯田道史氏と、映画史・時代劇研究家の春日太一氏、そして歴代最高視聴率を記録した『独眼竜政宗』(1987年)の脚本家・ジェームス三木氏が、これからの大河ドラマに望むことについて語り合った。
春日:大河の作り方のターニングポイントは、ちょうどジェームスさんが大河から離れた頃、『葵 徳川三代』の2年後の『利家とまつ』(2002年)でした。
これを機に大河では、女性が大活躍して政治の表舞台に出て「戦は嫌でございます」と反戦主義を口に出して言うようになります。現代性を持ち込むことは大事ですが、完全に現代の価値観でやるなら歴史劇の醍醐味はないように思えます。
三木:大きい声じゃいえないけれど、確かにそうだね。それに、やっぱり人間、とくに女性を描くには「哀愁」が必要なんだ。『おんな城主 直虎』(2017年)も僕は熱心に観ていたけれど、欲をいえばもっと直虎(柴咲コウ)の哀愁を描いてほしかった。
ガンガンと男勝りに積極的に突き進むだけじゃなくて、戦場とは裏腹な寂しさを直虎から感じられればもっと作品が引き立ったと思う。僕はよく言うんです。ドラマという言葉は「ジレンマ」から来ているのではないかと。思うようにならないもどかしさこそが人物を描く魅力になる。