対外的には、軟化しつつある正恩氏だが、国内では相変わらずの強権を振るっている。

 4月1日夜、韓国芸術団が平壌市内の東平壌大劇場で公演した。チョー・ヨンピル氏や人気女性グループ「レッドベルベット」らが歌や踊りを披露した。正恩氏は出演者一人ずつと握手を交わし、「人民たちが南側の大衆芸術について理解を深め、心から歓喜する姿を見て、感動を禁じ得なかった」と述べたという。

 だが、労働党機関紙・労働新聞はその当日、正恩氏の態度とは逆に「資本主義社会で小説、映画、音楽、舞踊、美術は腐り果てたブルジョア生活様式を流布し、人々を堕落させる」と批判する論評を載せた。

「冷酷な戦略家」(北朝鮮関係筋)は、外交舞台で笑顔を振りまく一方で、国内の監視・統制を強めている。

●しろうち・やすのぶ/朝鮮半島情勢に精通するジャーナリスト。主な著書に『猛牛と呼ばれた男 「東声会」町井久之の戦後史』『昭和二十五年 最後の戦死者』。共著に『朝鮮半島で迎えた敗戦 在留邦人がたどった苦難の軌跡』など。

※SAPIO2018年5・6月号

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