「今こそ日本には、朝鮮半島に関わらない戦略が必要」──朝鮮半島を長きにわたり取材・分析してきた東京通信大学教授の重村智計氏は、こう断言する。
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3月に行われた中朝首脳会談の実現を「金正恩外交の大成功」と評価するのは間違いだ。中国外務省の公表文を丹念に読むと、金正恩・朝鮮労働党委員長が習近平国家主席に対し、「これまで中国を訪問せず申し訳なかった」と謝罪する様子がうかがえる。
つまり、3月末の訪中は金正恩の「お詫び行脚」であり、困り果てた北朝鮮が最後の最後に中国に泣きついたのが実情なのだ。
中国としては、米国のトランプ大統領が貿易問題で「敵対政策」を表明したことへの対抗手段として、金正恩の電撃訪中を受け入れた。一方のトランプは、自身のスキャンダルから国内世論やメディアの関心をそらすため米朝首脳会談に即座に応じた。
「世界各国の指導者は国際平和のために理想を掲げて日夜努力している」と信じるのは、とんだ思い違いである。国際政治においては、みな自国の利益しか考えず、外交を国内問題の回避に利用するのが常だ。
金正恩が習近平に泣きついたのは、国連や日米による制裁で北朝鮮が困窮したからだ。北朝鮮の軍隊は世界で最も石油の少ない軍隊であり、今年の制裁が実行されれば年間の軍事用石油は40万tに減る。戦争をしない日本の自衛隊でも年150万tの石油を消費しており、彼我の燃料差から北朝鮮軍が「戦えない軍隊」であることは明白だ。