例えば、新築時は管理費が2万円で修繕積立金が8000円の新築マンションがあったとする。このうち、修繕積立金は5年後には1万2000円、10年後には1万8000円、15年後には2万4000円になったりする。すると、月々の負担は管理費と合わせて4万4000円。かなりの額ではないか。
月々の負担が4万円を超える中古マンションとなると、中堅所得者にとっては負担の重さを感じてしまう。売却しにくい物件になる。その分、物件価格を安くする必要も生まれる。だから「修繕積立金が大きく値上がりする築10年未満で売却しよう」という発想になってくる。
(B)は大規模修繕工事の前に売り抜けるというシナリオだ。大規模修繕工事というのは、今時の分譲マンションについては必須項目になっている。私はすべてのマンションに大規模修繕が必要だとは思わないが、その議論は置いておく。
大規模修繕工事にはザックリと見て1住戸あたり100万円の工事費用が発生する。管理組合がそれまで積み上げた積立金を根こそぎ持っていかれる場合も多い。すると、大規模修繕工事のあとは管理組合の財務力が著しく低下する。
そこへ万が一、大地震や水害などに見舞われると、緊急の修繕工事が不自由なことになる。また、修繕積立金会計がゼロに近い中古マンションは、資産価値が不安定化する。だから、1回目の大規模修繕工事の前に売り抜けようという発想だ。
(C)は築35年というひとつの区切り前に売却しようという考え方である。新築マンションは年々建物が老朽化していくが、築30年くらいまではまだ売却がスムーズだ。しかし35年頃から怪しくなって築40年以上の中古マンションを選択する人は稀。また「35年ローン」を払い終える人が多くなるので、そのマンションを「安くてもいいから売りたい」という人も多くなる。そうなると資産価値も不安定化する。