政権が窮地に追い込まれるたびに、「解散風」が吹き荒れる。今回、官邸サイドから聞こえる解散論の狙いは野党対策ではなく、自民党内の安倍批判封じにある。遅くとも6月には解散という情報が飛び交うなか、安倍批判を封じ込めるはずの官邸の解散論は、逆に自民党内の危機感を増幅させている。
とくに風だけで当選してきた1~3回生の安倍チルドレンの動揺が激しい。
「自民党が38議席減と大敗した森内閣の『神の国解散』の時でさえ支持率は30%あったが、いまの安倍内閣は20%台の調査も出ている。いくら野党の選挙準備が整っていないとはいえ、解散すれば大きく議席を減らすでしょう。前回総選挙(昨年10月)で自民党が小選挙区で勝った選挙区のうち得票差が1万票以内だった約30の選挙区は軒並み落選の可能性があります」(政治ジャーナリスト・野上忠興氏)
そうした中、逆風選挙を戦った経験を持つ非主流派のベテラン議員は解散になれば「反安倍」の旗をあげる覚悟だと言い切る。
「逆風の元凶は安倍総理。解散になって有権者が安倍政権を完全に見限っているとわかれば、われわれは選挙で“安倍政権に代わるしっかりした受け皿をつくる”と訴えて戦う。政策面でも、ポスト安倍の総裁候補たちはアベノミクスを大っぴらに批判して自分たちの独自の政策を掲げるはずです。総選挙が総裁選とごっちゃになって、自民党内は反安倍陣営と安倍支持派に分かれて戦い、より多くの議席を得た方が政権を取るという分裂選挙になる」
与党から複数の総理・総裁候補が出て総選挙を戦うというのは議会制民主政治の常道からはほど遠いように思えるが、実は、自民党派閥政治時代の“御家芸”でもあった。政治アナリストの伊藤惇夫氏が語る。