「安倍首相は信頼できないが、野党に政権を任せるのはもっと心配だ」──そういう有権者の声を利用して、首相は何度も「解散風」をふかせ、実際に解散し、権力維持をはかってきた。今回、安倍晋三首相の解散への足がかりが日朝交渉だ。
「総理は拉致問題で一定の成果をあげて支持率を一気に上向かせ、その勢いで解散総選挙を打つのがベストと考えている」(側近)
それだけに北朝鮮外交で1人蚊帳の外に置かれていた首相は焦りを強めていたが、南北首脳会談後に文在寅・韓国大統領から「金正恩・委員長は日本と対話する用意がある」と日朝会談の可能性を伝えられると喜色満面になったという。
ところが、そこでは“安倍政権の生死”を賭けた駆け引きが待っている。産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏はこう話す。
「安倍首相が日朝会談で拉致問題解決を持ち出せば、北朝鮮は必ず日本に経済支援を求めてくる。戦時賠償金1兆5000億円程度を要求してくるのではないかと言われています」
安倍首相はそのとき、強硬姿勢を取ると推測されている。
「『拉致問題が解決しない限り、日本はビタ一文支援できない』と強く出ることでカネがほしい金正恩から譲歩を引き出せると読んでいる」(拉致議連幹部)
しかし、そんな楽観論が通用する相手ではない。日朝交渉に関わってきた外務省関係者が語る。