サラリーマンの「肩書き」は近年、“複雑”になり、新入社員だけでなくベテラン社員でさえ困惑する状況が生まれている。近年に増加している印象が強いのは、カタカナ表記の肩書きだ。
「先日立ち上げた新規プロジェクトの打ち合わせで大手広告代理店の担当チームからもらった名刺には『アカウントスーパーバイザー』『アカウントディレクター』『アカウントマネージャー』、さらには『AE(アカウントエグゼクティブ)』という肩書きが並んでいた。いずれも営業マンを指すらしいのですが、担当者が帰ったあと名刺を見返しても、誰が一番偉いのか、さっぱりわかりませんでした」(40代・大手メーカー社員)
ちなみに、「エグゼクティブ」は英語で「経営者」「重役」などの意味だが、このケースでは「アカウントエグゼクティブ」がいちばん下の若手社員だったという。
企業の人事制度に詳しい一橋大学経済研究所特任教授の都留康氏によれば、「年功序列という日本型雇用モデルが見直され、役割の重要性の序列で格付けしようとなった。それに伴い職位の名称変更が進み、肩書きの“インフレ”が起こった」という。
「伝統的な企業では『担当部長』といった部長から派生する呼称、比較的歴史の浅い企業ではカタカナ表記が目立つようになりました。たとえば『ゼネラルマネージャー』と『シニアスーパーバイザー』では第一印象でどちらが上位かわからない。むしろそれが狙いで、“年下なのに上司”といった状況をあえてわかりにくくし、社員のモチベーションを維持する側面があります」