5月13日に初日を迎えた夏場所での、協会関係者の関心事は一点に絞られている。「“新大関・栃ノ心”誕生なるか」だ。
つい1年前まで注目の的だった唯一の日本人横綱・稀勢の里は、“主役交代”を宣告された状況だ。
「休場続きで、もはや誰が見ても引退目前。稀勢の里から『荒磯』の年寄株を借りていた元前頭・玉飛鳥が『熊ヶ谷』に名跡変更し、いつでも引退して『荒磯』が襲名できる状況になった。だからこそ協会も完全に“次のスター”づくりに軸足を移し、メディアもそれに追随している状況。場所前から、春日野部屋に出稽古に来た稀勢の里を栃ノ心が圧倒した様子を逐一、報じていた。
栃ノ心は平幕優勝した初場所で14勝1敗、春場所で10勝5敗。今場所は11勝か10勝、あるいは9勝でも“3場所33勝”となるので内容次第で昇進というムードが煽られている」(協会関係者)
この昇進の“基準”が、過去の例に照らして明らかに低いハードルであることは、本誌・週刊ポスト前号でも報じたが、そんなことはお構いなしの様子で突き進んでいる。ところが、ここにきて協会執行部にとっての“不安要素”が頭をもたげているというのだ。カギとなるのは「審判部」だ。
「横綱や大関の昇進に際しては、『審判部』が会議を行ない、理事長に対して昇進を諮る臨時理事会の招集を要請する手続きになっています。そこでネックになってきそうなのが、審判部にヒラの年寄として配属された貴乃花親方の存在です。栃ノ心が中途半端な成績の場合、昇進に“物言い”をつけるのではないかという話が出てきている」(若手親方)
八角理事長(元横綱・北勝海)との角界を二分する暗闘で敗れ、“一兵卒”として出直すことになった貴乃花親方が、声をあげる可能性があるというのだ。