日本のエネルギーの中心は、原子力になるはずだった。ところが、2011年3月の福島第一原発事故のあと、この方針は現実的ではなくなった。今後、日本のエネルギーはどのような運命をたどるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、そのあるべき姿について提言する。
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経済産業省の有識者会議「エネルギー情勢懇談会」が4月にまとめたエネルギー長期戦略の提言は、極めて抽象的かつ総花的な内容だ。「総力戦」という時代錯誤な表現を使い、再生可能エネルギー、原子力、化石燃料、蓄電の組み合わせについて「複線型で、状況変化に応じて重点化を行い、それに足下の打ち手を的確に適用させていく」としているが、これはほとんど何も言っていないのと同じである。続いて発表されたエネルギー基本計画の骨子案も、原発を「重要なベースロード電源」としながら「依存度を可能な限り低減させる」とどっちつかずの位置付けとなっている。
現在の安倍政権は“経産省内閣”と揶揄されるほど、首相周辺で経産省出身者が重用され、同省出身の側近がトランプ米大統領との関係など外交まで差配しているとも言われている。だが、その一方で経産省は日本のエネルギー政策はどうあるべきか、なかんずく原発をどうするか、という議論を曖昧なままにしている。
安倍政権の発足後、経産省はずるずると原発再稼働に向けて動き始めた。本来は福島第一原発事故の原因を徹底的に検証し、どうすれば事故が防げたのか、今後の対策はどうあるべきか、といったことを入念に議論した上で、再稼働できる理由を国がきちんと国民に説明しなければならないのに、全くやっていない。
安倍首相の次の首相には、ぜひ今後のエネルギー政策と原発問題で3~5年後をめどに国民投票をしてもらいたい。それは安倍首相型のなし崩し的推進論でも、小泉純一郎元首相のような危機感だけを煽る反対論でもなく、客観的なデータと見通しに基づく冷静な議論を重ねた上での国民投票だ。
たとえば、スウェーデンは1980年に原発利用の是非を問う国民投票を行ない、新たな原発は建設せず、2010年までに全原発を閉鎖すると決定したが、太陽光や風力がなかなかうまくいかないため、現在は原発存続に舵を切っている。