『犯罪白書』(平成28年版)によれば、65歳以上の高齢者の検挙人数は4万7632人。20年前に比べて約3.8倍に増えた。それに伴い、刑務所内の高齢化も急速に進んでいるが、認知症問題にどう対応しているのか。
「刑務所は認知症が発覚しにくい場所なんです」
そう語るのは、主に刑期10年未満の再犯・累犯者などを収容する、広島刑務所の刑務官だ。一般社会の生活では、仕事や買い物などの日常生活のなかで“物忘れが激しくなった”“やり慣れたことの手順がわからなくなった”など、本人や周囲が認知症の兆候に気付きやすい。しかし、受刑者の場合、「職員の指導と規則に従う生活のなかで、認知症かそうでないかを周囲が見分けづらい」(同前)のだという。
広島刑務所においても、60歳以上の受刑者の割合は25.8%(今年3月時点)。その数字は年々増え続けている。そこで、同所では2年前から非常勤の介護福祉士を雇い、高齢の受刑者に対して様々な“認知症対策”の取り組みを始めた。
「介護福祉士の方にお願いして、65歳以上の受刑者が多く働く工場で、DVDを見て座りながら体を動かす『体操』や、漢字や算数の簡単なテストで『脳トレ』を行なっています。昨年1年間の試験期間で効果が見込めそうだったので、今年度から週に1回30分ほど、工場での刑務作業の合間に本格的に行なうことになりました」(同前)