繁華街の路上などで異性に声をかけて誘う「ナンパ」という行為は、男性が女性に向けてなされるとき使用される。軽薄だと嫌われることも多いやり方だが、あくまできっかけなので気にしない人も少なくない。出会いを求める男性向けに、上手なナンパの方法を伝授するとうたうセミナーや塾まで存在する。ライターの森鷹久氏が、ナンパセミナーをきっかけにした性犯罪の危険性と、多くのセミナーに見られる悪辣な手口についてレポートする。
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ナンパセミナーで知り合った男二人が、女性に酒を飲ませて乱暴し逮捕された、という事件。一般人にとっては何が何だかわからない、語感ばかりが面白おかしく報じられるばかりの、不可思議なニュースであった。大手紙の警視庁担当記者が解説する。
「ナンパセミナーと呼ばれるサークルで知り合った男二人が、女性に酒などを飲ませて酩酊させた上、乱暴したとして逮捕されました。犯行が、セミナーの主催者らが所有するマンションで行われ、その際に女性に無断で動画も撮影されていたのではないかという話もあることから、当局はセミナー自体にも違法性がなかったか、捜査を進めているといいます」(大手紙の警視庁担当記者)
男ら二人は、女性の口説き方や性交に至るまでの”テクニック”を指南するという「ナンパセミナー」に入会し、実際に街でナンパをしてみる「実地練習」や、女性心理などについて「座学」で学んでいた。ナンパで知り合った女性とその友人ら四人で飲酒した後に、友人の女性が男らから暴行を受けたが、こうした「ナンパセミナー」の実態に詳しい雑誌記者は、セミナーそのものが「女性蔑視のおぞましいサークル」だと指摘する。
「ナンパの指南塾、といった類のものは、何十年も前からありました。ネットが普及してからは、多くのナンパセミナーが立ち上がり、詐欺まがいの所もあれば、大真面目に”オンナの落とし方”を勉強する所もありましたが、共通しているのは”女性を性のはけ口”としか見ていない連中の集まりだ、ということ。会員は互いに”今月は新規(女性)何人食った”などと自慢しあい、女性と自分のツーショット写真や、時には性交中に隠し撮った写真を見せびらかすのです」(雑誌記者)
また、別の風俗事情通は、こうした”セミナー”はそもそも、インチキやデタラメの上に成り立っていた、とも話す。
「ネット上のナンパセミナーのほとんどが、とある大手出会い系サイト傘下の会社や個人によって運営されていた時期がありました。元々は”いかにして出会い系サイトで女と知り合い、モノにできるか”というテクニックの指南塾でしたが、出会い系はすでに素人のふりをしたプロの風俗嬢による”援助交際”の場となっていましたし、出会い系サイトの自作自演であった面は否定できない」(事情通)
要は、ナンパがうまくなりたいとセミナーの門戸をたたく男たちは、出会い系サイトが運営するセミナーに数万から十数万円の高額なカネを支払い、またまた有料の出会い系サイトに登録し、そこで出会ったプロの女性らにカネを支払い交際していた、ということ。もちろん、きっかけはナンパでも、お互いを尊重したよい関係を築くカップルもいないことはない。だが、そんな成功例は「ゼロではない」という程度の存在感だ。
また、かつてナンパセミナーに参加したことがあるという男性(37)は、新たに出会い系サイトが立ち上がるたびに新しい「ナンパセミナー」が立ち上がり、それぞれの出会い系サイトを使わせることで「数を競う」よう指導されていたことを思い返す。