家電量販店大手のヤマダ電機は数年後、もはやライバルはビックカメラやヨドバシカメラではなく、ニトリホールディングスになっているかもしれない──。
かつてヤマダ電機といえば、家電量販店業界で “国盗り物語”のごとく勢力を拡大し、2011年3月期の売上高は2兆1500億円を超えていた。「規模は力なり」を地でいった昔のダイエーのように、スケールメリットを武器に大量仕入れで売価に反映し、同業他社よりも安価に商品を売り出して消費者の支持を集めた。
ところが直近の2018年3月期の売上高は1兆5738億円。7年間で実に6000億円近く売り上げを落としたことになる。ネット通販隆盛の影響で怒涛の出店が裏目に出てショールーミング化し、特に無双状態だった郊外店を中心に閉店していったことが効いたのだろう。
この間、ヤマダ電機は単にメーカーから家電製品を仕入れるだけでは差別化にも限度があると見て、続々と自社ブランドのプライベートブランド(以下PB)商品も共同開発していった。
最近でいえば電気自動車(以下EV)市場への参入を表明し、2020年までに1台100万円以下の激安EVを販売するとした。EV開発のベンチャー企業に出資して部品は中国から調達を見込み、生産は船井電機に委託というビジネスモデルだ。
だが、激安EVならもっと話題になってもよさそうだが、消費者の間でも「ヤマダ電機のクルマ? 安かろう悪かろうじゃないといいけどね」(シニア世代の会社員)とあまり期待されていない声も聞かれる。実際、ヤマダ電機はまだ、PBの家電製品でさえ結果を出していないのだ。
遡ると、まず「エブリパッド」という商品名でタブレット市場に参入した際は、ヤマダ電機のトップが当時、「画面の小さいスマホはいずれ廃れてタブレットが本流になる」と豪語したものの、市場が縮小したのはタブレットのほうだった。その後、今度は「エブリフォン」という名称でウインドウズフォンを出したものの、これも失敗。後年、「エブリフォン」は捲土重来でアンドロイドスマホを複数機種投入したもののヒットしなかった。
さらに、前述したEVの生産委託先となる船井電機と組んで4Kテレビも発売したものの、話題を集めたのは、「中身が東芝のレグザ製と変わらないのに激安」と人気が沸騰した、ドン・キホーテが発売したテレビのほうだった。タブレット、スマホ、テレビに続く激安EVが、“4度目の正直”でヒットするのか、懐疑的な見方が多くなるのは仕方がない。