日本の多様な麺文化のなかでも、近年、最も勢いを感じさせるのが「うどん」ではないだろうか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏がレポートする。
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ほんの数年前まで、うどんと言えば讃岐うどんだった。いや、現在でもそうかもしれない。2018年4月現在の数字を見ると、店舗数では国内最大の「丸亀製麺」が796店舗、ブームに先鞭をつけた「はなまる」が465店舗。この2店舗だけで全国に1200以上の店舗を構えている。
もっともこの数年で讃岐以外にも、国内のさまざまなうどんに光が当たりだした。価値の多様化が進行し、いわゆる「コシ至上主義」からの脱却も見られるようになった。メジャーメディアでは『dancyu』2013年4月号のうどん特集内で『三大「ふにゃふにゃ」うどんの主張」として「伊勢うどん」「京うどん」「博多うどん」が取り上げられている。
それから数年が経ち、いま九州のうどんに熱い視線が注がれている。上記の記事にもあるように、全国的には九州のうどんは「やわうどん」として知られているが、近年までは九州に地縁のある人以外に「うどん」の存在はあまり知られていなかった。
それにはいくつかの理由があるが、先行するラーメンブームによって「九州の麺と言えばラーメン」という刷り込みがなされていたのも大きい。観光名所だった屋台や深夜まで営業している名物居酒屋などで提供されていたこともあり、全国から訪れる観光客にとって「九州の麺=とんこつラーメン」という刷り込みが先になされてしまったのだ。
もっとも九州人や福岡出身者、さらにはディープな博多好きのなかにはソウルフードとして「うどん」を挙げる人も少なくなかった。1966年に創業した「ウエスト」はうどんを中心に居酒屋や焼肉などさまざまな業態で約150店を展開しているが、つるつるとやわらかい口当たりにもっちりとした食感のうどんは九州の多くの県で人気が高い。
「やわ系」の代名詞と言えば福岡を中心に18店舗を展開する「牧のうどん」だろう。もともと地元では人気のローカルチェーンだったが、「(いい意味で)コシがない」「(つゆを吸って)麺が増える」うどんとして、この数年県外でも人気がブレイク。好事家の間で人気となっている(僕も大ファンである)。
福岡のうどんは広いすそ野に支えられている。1951年創業の老舗「因幡うどん」も福岡市内に数店舗を構えているし、「かろのうろん」「みやけうどん」など地元に根づいた人気の個人店もある。「大地のうどん」のように東京に進出した気鋭の店舗もある。
その九州のうどんに新たな全国的スターが現れる兆しがある。今年3月30日投資ファンドユニゾン・キャピタルが「株式会社資さんの株式取得に関するお知らせ」というリリースを発表した。そのリリースには株式取得した旨に加えて、以下のような文面が綴られていた。