学校にも行かず、仕事にもつかず、病気でもないが、6か月以上家を出ない社会的ひきこもり。あまりに人数が多いため「ひきこもり」という言葉だけで、その様子を意味するようになった。増える大人のひきこもり問題について、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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政府が初めて「中高年世代のひきこもり」について、実態調査に乗り出すと発表した。早ければ今年の秋から、40代~60歳前後までの約五千人の中高年ひきこもり者とその家族を訪問し、原因や期間などの聞き取り調査を実施するのだという。
ひきこもりといえば、主に10代から20代の若者が「陥ってしまう」というイメージが強い。しかし現在では、かつて若かったひきこもり者が十年二十年と続けたことで、三十~四十代のひきこもりが大勢、生み出されている。内閣府が2015年に調査した結果によれば、15歳から39歳のひきこもりは推計値で54万1千人と、前回調査の2010年に比べて減少傾向にあるものの、ひきこもりの期間が「7年以上」と答えた人は増加しているという。
「若者のひきこもりは、親や学校、地域が把握していることもあってか、まだ社会とのつながりがある。問題は、何十年も引きこもったまま、親が高齢になり自分も年を取って、家ごと社会から断絶されるパターンです。もはや社会復帰の可能性はゼロで、ひきこもりの人そのものが社会から”いないこと”にされる。すでにそういう人が多く存在していて、今更調査に乗り出したところで、その実態を正確に調査できるのか疑問です」
大手新聞社に所属し、ひきこもり問題について長年取材を続けてきた記者は、政府が「中高年のひきこもり問題」についての調査に乗り出したことを「あまりに遅すぎる」と指摘する。記者が語るような「いないこと」にされているひきこもり歴20年超の40代男性・Aさんが住んでいるという、千葉県某市の自宅を訪ねると、母親である70代の女性・Bさんが取材に応じた。
「あの子は働けません。おそらく障害があるんです。でも障害者としては認定されないしね……。私もあと何年生きられるかわからない。お父さん(A氏の父親、故人)が残してくれたお金があるからいいけど、あの子があと何年生きられるのか。私が死ぬとき、あの子も一緒に死んでくれるのが一番、他人様に迷惑をかけずに済むかもしれないけれど……」