43年前に世界最高峰のチョモランマ(エベレスト)登頂中の凍傷などがもとで両脚の膝から下が義足になった69歳の中国人登山家が5月14日、5回目の挑戦で、チョモランマ登頂に成功した。ネパール政府は今年1月に視覚障害者や両足切断者の登山禁止措置を出したが、同国最高裁が3月に禁止措置を無効と判断したばかりだった。両足が義足の登山家によるチョモランマ登頂成功は2006年のニュージーランド人男性・マーク・イングレス氏に次いで2人目。フランス通信(AFP)が報じた。
この中国人登山家は夏伯渝氏。もともと中国国家登山隊隊員で、ナショナルメンバーに選ばれた2年目の1975年に他のメンバーとともにチョモランマ登頂に挑戦。8600m地点まで達したものの、吹雪や強風などの悪天候に悩まされ3日3晩野営した際、寝袋を吹き飛ばされたため、両足が凍傷になり、両足首を失った。
その後、義足を付けて訓練に励み、健常者とともに登山を繰り返したが、不幸は重なるもので、1996年には血液のがんであるリンパがんにかかってしまい、両ひざから下を切断せざるを得なかった。
それでも、夏氏は「絶対にチョモランマ登頂を成功させたい」との強い思いから、義足をはめて、厳しい訓練を繰り返した。腕立て伏せ100回を5セット、腹筋200回を5セット、スクワット100回を5セットなど、毎日1時間半の筋力トレーニングを継続。さらに、20kgの重りが入ったリュックサック背負って、毎日10km以上歩くなどの厳しい訓練を自らに課した。
その姿を見た中国国家登山隊のメンバーらは夏さんの堅い決意に動かされ、夏さんをチョモランマ登頂部隊に推薦し、ともに3回も挑戦したが、頂上に到達は果たせなかった。