高齢ドライバーの肩身は狭い。高齢者が事故を起こすたびに大きく報じられ、国からは免許返納を促され、家族からも「そろそろ運転やめたら」と忠告される。いや、私はまだ車を手放すつもりはない!と免許を更新しようとすると新たな壁が立ちはだかった──。
7月で70歳になる兵庫県在住の団体職員がため息をついた。
「誕生月の半年前の1月末に3つ折りハガキで『高齢者講習』のお知らせが来ました。案内には県下の自動車学校のリストがあり、2月から8月の受講期間の間に受けてくださいと書いてある。近くの教習所に電話したが、5か月以上先まで予約がいっぱいで、入れられたのは免許の有効期間の2週間前。その日に体調を崩したらと不安です。運転免許の更新だけでも面倒なのにこんなことになるとは……」
道路交通法で70歳以上の人には免許更新時に高齢者講習が義務づけられている。また昨年から新たに75歳以上の人は認知機能検査を受け、「認知症の疑いなし」と判断された後に高齢者講習を受けることとなった。この法改正によって高齢ドライバーの免許更新の手続きが煩雑になり、教習所はその対応に追われている。その結果、高齢者講習を受けようとしてもすぐに受けられない状況が生じている。
「近くの教習所では有効期間内に予約が取れず、焦って10数か所に電話しました。2時間以上もかかる遠い教習所で、ようやく3か月先の予約が取れた時はホッとしましたよ」(72歳男性)
東京都では3か月待ちの教習所が11か所もあり、なかには5か月待ちという教習所も存在する(5月1日時点)。全国の平均待ち日数は56.4日で、奈良県では128日、埼玉県では102日待ち(警察庁公表の12月末の認知機能検査の予約から受検までの待ち時間)など、全国的に混雑しているのだ。