これまで「お墓」と言えば、お寺や墓地、霊園などにあるものだったが、近年CMなどで盛んに宣伝されているのが“ビル型納骨堂”だ。中でも、お参りする際に遺骨が自動で運ばれてくる機械式納骨堂は、都心を中心にブームとなっている。ノンフィクションライターの井上理津子氏が、そんな納骨堂の内奥をレポートする。
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自動搬送式の納骨堂が登場したのは、1990年代の後半だ。私がこの形式のところに初めて足を踏み入れた2013年には「都内に5、6箇所」と聞いたが、わずか約5年で急増した。目下、建設中のところも含めると首都圏で約30箇所に及ぶ。
1箇所の平均基数4000~5000。完売すれば、使用者数は12万~15万人となる。明治時代から歴史を刻む都立霊園8箇所の使用者数の合計は約28万人だから、自動搬送式の納骨堂は誕生して20年ほどで、その約半数に届こうとしているのだ。
購入したのは、どんな人たちか。新宿、本郷、小石川にある自動搬送式の納骨堂の利用者に購入動機をヒアリングした。主な回答は、こうだ。
「東京に家を持とうと同じ感覚です。私は二男で、18歳から東京暮らしなので」(60代、男性)
「ふたりで終活をして、選びました」(70代、夫婦)
「夫が急逝し、必要に迫られて」(70代、女性)
「父の故郷の九州にあったお墓は、遠くてお参りに行けないし、東京育ちの私には特に愛着はないので、引っ越しさせました」(50代、男性)
一般的なお墓の購入動機と変わらないが、私が聞いた限り、みなさん満足度が非常に高い。「いい買い物ができた」と掛け値なしに喜んでいる。自動搬送式の納骨堂を選択した理由に、決まって挙げるのは「交通至便」と「価格が手軽」「気軽に行ける」。「子供に迷惑をかけたくないから」という言葉も、必ずといっていいほど出た。