三菱UFJ銀行のATMで、三井住友銀行のキャッシュカードを使って預金を引き出そうとすると、平日の昼間でも108円の手数料がかかる。何度も繰り返せばバカにならない額になるから、少し離れた三井住友のATMまで足を伸ばす──預金者がそんな面倒から解放される日が近づきそうだ。
5月11日に読売新聞が朝刊で〈3メガ銀 ATM共通化 数年内実現へ協議入り〉と報じると、他メディアも追随。みずほ銀行は当面、グループ内の新システムへの移行作業を優先させるが、三菱UFJ銀行と三井住友銀行は共通化の検討に入ると相次いで報じられた。
5月14日の決算発表会見で三井住友フィナンシャルグループ(FG)の國部毅社長は「これから協議に入る段階だが、前向きに検討したい」と意欲を示し、翌15日、同じく決算発表の場で三菱UFJFGの平野信行社長も「前向きに考える時に来ているのではないか」と同調。みずほFGの坂井辰史社長は「両社から打診はないが、積極的に検討したい」と述べている。
現在、3メガバンクのATMは、三菱UFJが約8300台、三井住友が約6000台、みずほが約5600台の計2万台にのぼる。現状でも手数料さえ払えば他行のATMから振り込みや引き出しが可能だが、共通化が実現すれば、手数料は相互無料化される見込みで、顧客の利便性は向上する。
一方で、“それができるなら、なぜ今までやってこなかったのか?”という疑問は浮かぶ。これは“技術革新によって可能になった”という類の話では決してない。背景には、銀行を取り巻く環境の激変がありそうだ。
「インターネット取引やコンビニATMの普及により、メガバンクでは支店への来店客数がこの10年で3~4割も減った。そうした中、ATMの運営コストは警備費や現金の輸送費、保険料などを含めれば1台当たり月額数十万円かかっていて、利用者からの手数料だけではペイしきれないのが実情です。ただATMは社会インフラでもあり、簡単になくすわけにもいかない」(メガバンク関係者)