親を看取り、子供も巣立ち、いよいよ人生の後半戦。再びふたりに戻った夫婦の前に立ちはだかるのが“終活”だ。家のこと、思い出の品、お墓のこと、お金のこと…それらに頭を悩ませる人、けんかする人は数知れず。そんな熟年夫婦の間で、中尾彬(75才)と池波志乃(63才)が先ごろ刊行した『終活夫婦』(講談社)が話題を呼んでいる。芸能界きってのおしどり夫婦が行っている、人生を楽しむための“終活”について、話してもらった。
彬:初めは“終活”っていう言葉も知らなかった。たまたまテレビ番組で「いろいろ整理しているんだ」と話したら、「それは“終活”ですね」なんて、言われてね。
志乃:ただ整理していただけ。というのも、私たち子供がいないし、年をとってくると、家が3軒もあると大変なの。
彬:じゃあ大きいものから少しずつ片付けていこうって、いろいろ調べたね。木更津にあるアトリエは30年も経っていて、修理しようと思ったら500万円もかかるって言われて驚いたよな。
志乃:窓1枚で500万よ!
彬:家はどんどん壊れていくから、少しずつ整理していこうと決めたけど、とにかくお金がかかる。木更津のアトリエは、撤去代と土地の売却代でほぼトントンだったね。
志乃:沖縄のマンションは、1か月に1度、15年くらい通っていたの。行くと私は掃除をしなきゃならない。彬は、「おれがいると邪魔だから終わった頃に帰ってくる」って、友達とどっか行っちゃって。
彬:…そうだったかなぁ(笑い)。
志乃:「暑いのも気持ちいいわ」と、窓を開けっ放しで掃除して、若い時はそれでよかった。でもある日突然、すごく億劫になってしまって…。女って、どこかでいきなり大変になるのよね。「あれ? 沖縄に来ても掃除ばかりして、何やってるの? 私…」って、急にくたびれてしまった。
彬:男は何でもほしがるじゃない? 別荘を造りたいと思っても、若い時はお金がなくて手に入らない。でも、それが仕事の励みになったし、自分はここまで達成できたという証にもなった。だけど、ずっとは持っていられないんだよね。年をとると若い頃のようには動けなくなるからね。
志乃:家はなくなったけれど、沖縄で出会った友達との縁はずっと続いている。無駄なことなんて、1つもないのね。
◆写真は1年に4枚、ねじねじは半分に
彬:写真も1万枚近くあって、「ああ懐かしいなあ~」と思いながら見るんだけど、「…志乃、これ誰だっけ?」というのも多いんだよね。一緒に写っているけど、もう誰だかわからないの(笑い)。
志乃:そう、写真もたくさん処分しましたよね。
彬:写真は1年に4枚あればいい。春夏秋冬、1枚ずつ。「写真を捨てる決意がよくあるね」なんて言われるけど、記憶は(頭と胸を指さして)ココとココに残っていればいいんだよ。