昨今もっとも注目されている大学といえば、“アメフト悪質タックル”のニュースが連日報じられている日本大学だろう。輩出した卒業生数は116万人で、現役の学生数は6万7933人(通信教育部・短期大学部を含めると7万8379人)と全国1位。
そんな巨大組織である日本大学の学部・学科の拡大路線に、田中英壽理事長が新たな一ページを加えたのは2016年のことだ。東京・三軒茶屋に危機管理学部とスポーツ科学部を開設したことで、学部は16、学科は87に達した。
注目されたのは、警察OBの高級官僚が並んだ危機管理学部の教授陣だ。インテリジェンスを専門にする茂田忠良教授は、1975年に警察庁入庁の元四国管区警察局長。警察行政の金山泰介教授は1980年入庁の元埼玉県警本部長。河本志朗教授も山口県警から外務省、警察庁に勤務した後、国際テロなどを専門とする研究者に転じた元警察官である。ジャーナリストの伊藤博敏氏が解説する。
「高級官僚と日大の間を取り持ったのは警察OBの亀井静香衆院議員(当時)だといわれています。2013年にアルジェリアで起きた日揮社員らの人質事件をきっかけに危機管理という分野に注目が集まるなかで田中氏は危機管理学部の着想を得たといい、警察OBにとっては再就職先が、田中氏にとっては28年ぶりの学部新設を錚々たる陣容で成し遂げるという結果になった」
開校式当日に開かれた祝賀会では、田中氏のテーブルに亀井氏、森喜朗元首相、國松孝次元警察庁長官が着く盛況ぶりだったという。
だが、今回の悪質タックル後の日大のお粗末な対応を見るにつけ、“危機管理学部教授”たちがアドバイスする態勢にはなっていなかったようだ。あの「悪質プレー指示」が、「スポーツ科学」の真逆の行為であることも言を俟たない。