インターネットでは、ユーザー好みのページを自動的に表示するシステムが行き渡っているため、意識しないと受け取る情報が偏ってゆく。そして、チェック機能が十分に働いていない情報も飛び交っているので、慎重にその真贋を確かめる必要がある。いわゆる「ネットde真実」に目覚める恐ろしさについて、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が解説する。
* * *
「ネットde真実」という言葉がある。簡単にいえば、「マスコミは報じないけどネットで発見した真実」といった意味だ。「だからマスゴミは信用できない」という言葉とともに「ネットにこそ真実が存在する」と書かれるが、ガセネタであることも多いうえ、マスコミはすでに報じていることも常である。その「ネットde真実」の情報を基に、ズレた正義に目覚めて無駄な行動力を発揮することもセットになりがちだ。
それがよく現われたのが、朝鮮学校への助成金交付などを求める声明を発表した全国各地の弁護士会に対し、大量の懲戒請求が寄せられた件である。ブログ「余命三年時事日記」が懲戒請求を煽ったことにより殺到したが、日弁連によると2017年は約1000人から約13万件の懲戒請求が寄せられたという。そして、これらの多くが同ブログに起因するものだという。結果的に複数の弁護士が業務妨害と精神的苦痛を負ったとして、和解条件の提示と訴訟への言及を行なった。
テレビ朝日の情報番組に出演した懲戒請求者(40代女性)は「『懲戒請求』というシステムのことをよく分かってなかった」「そのブログが言っているんだからこれは正しい方法なんだろうと思い込んで賛同してしまいました」「どれだけの賠償をしなければいけないんだろうと思って本当にドキドキが止まらない」と述べた。