政界と霞が関が固唾を呑んで注目しているのが、財務省のトップ人事をめぐる駆け引きだ。「最強の官庁」と呼ばれる財務省は事務次官、国税庁長官が不祥事で辞任し、空席が続く異常事態になっている。
〈傷だらけの財務省 次官誰に〉
産経新聞が5月21日付朝刊トップで報じた記事の見出しだ。次期次官の本命とみられていた岡本薫明・主計局長の昇格が見送られ、代わりに国際金融の責任者である浅川雅嗣・財務官、もしくは森信親・金融庁長官の起用が浮上している──という内容だった。
実は、浅川財務官は麻生太郎・財務相兼副総理の“懐刀”として知られる人物で、永田町では「“浅川次官構想”は間違いなく麻生人事だろう」と見られている。この人事が実現すれば、麻生氏は同省の「守護神」として影響力をふるうことができる。
もう一人の次官候補に名前があがった森氏の後ろ盾は菅義偉・官房長官だ。
森氏は長官就任以来、アベノミクスに合わせた大胆な金融改革を進めた。銀行が土地担保や保証がなければ企業に融資しない慎重な姿勢だったことから、アベノミクスで日銀が金融緩和しても企業への貸し出しが伸びない。そこで森氏は銀行に「企業の将来性を見込んで担保なしで貸せ」と迫り、体力のない地銀は容赦なく再編していった。