日本大学アメフト部選手による危険タックル問題は、運動部に根付く悪しき上下関係の範疇にとどまらず、事後対応で火に油を注いだ日大というマンモス組織全体の“腐敗”を露呈する形となった。「日大に限らず、いま共同体型組織そのものの体質が問われている」と指摘するのは、組織学者として知られる同志社大学政策学部教授の太田肇氏だ。
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日大アメフト選手の危険なタックル、財務省や文部科学省の官僚が関わった森友・加計問題、財務省の事務次官による記者へのセクハラ発言、その少し前に発生したレスリング界のパワハラや大相撲界の暴行事件、大企業における数々の不正等々、日本型組織の欠陥を露呈する出来事があいついだ。
いずれの不祥事も、いわば密室の中で絶対的な上下関係によって引き起こされたという構図が驚くほど似ている。一方で、その手口や対応があまりにもお粗末だったため、マスコミや野党のかっこうの餌食になった。
◆共同体型組織の病理現象
問題を起こした組織には共通点がある。それは閉鎖的で、メンバーが同質的かつ固定化していることだ。
大学の運動部は強豪になると高校から推薦で入部し、授業そっちのけで部員同士が共同生活を送る。卒業後は監督の推薦で有名企業に就職する。大相撲の部屋では入門した若い子たちを親方や女将さん、先輩力士がまるで実の親子・兄弟のようにして一人前に育てあげる。官僚や大企業の社員も、新卒で採用されると組織や上司に忠誠を尽くし、大きなミスさえしなければ年功的に昇進していくのが普通だ。
それは典型的な共同体型組織である。
共同体型組織は厚い壁によって外の世界から隔てられ、内側には絶対的な序列や上下関係が生まれる。そして内輪だけで通用する慣行や掟ができ、メンバーはそれにしたがって行動するようになる。
監督や師匠からの暴行や暴言、職場のハラスメントやいじめ、法令違反、データの改ざん、書類の隠蔽といった一般社会ではとうてい許されないようなことがさしたる抵抗なく行われてしまうのである。「流れぬ水は濁る」のたとえどおり、組織が腐敗するのは必然的だといってもよい。
にもかかわらずこれまで改められなかったのは、組織の内側が外の目にさらされることを想定していなかったためだ。
ところがいまは国民の間に主権者意識が高まり、情報公開の圧力が強まったうえに、インターネットの普及で情報や人々の声は一気に拡散する。一つの事件が発覚すると、閉ざされていた組織の内部が白日の下にさらされ、世間から集中砲火を浴びるのである。
けれども多くの組織は、いまだに内部が外の目にさらされることを想定していない。そのため事件や不正が明るみに出ても、これまでどおり「内輪の論理」で対処しようとする。もみ消し、口封じ、口裏合わせといった常套手段を用いるばかりで、対策は後手、後手に回る。それが結果として火に油を注ぐことになり、問題を当初の予想以上に拡大させてしまう。