これまで経験したことのない超高齢化社会の到来を前に、お墓のあり方も大きく変貌を遂げている。その象徴が、最近、車内広告や新聞の折り込みチラシで見かけることが多い“ビル型納骨堂”だ。中でも、お参りする際に遺骨が自動で運ばれてくる機械式納骨堂は、都心を中心にブームとなっているが、果たして問題はないのか。ノンフィクションライターの井上理津子氏が、そんな納骨堂の内奥をレポートする。
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自動搬送式の納骨堂の建設には、数十億円が必要とされる。墓地や納骨堂の運営は、自治体以外では宗教法人か公益法人に限られているが、そんな大金を寺が単独で賄えるはずがない。
「名義貸しに近い状態です。当寺にも自動搬送式納骨堂の業者から営業が相次ぎ、海外の投資家もついていると案内されましたが、私には机上の空論としか思えなかった。借金を背負い、失敗したら寺はつぶれる。しかも、もう供給過多。リスクが大きすぎ、断りました」
こう話すのは、渋谷区のある住職だ。巨額の初期投資の回収は、業者と分け合う墓の販売収入が頼りである。規模にもよるが、業界では「月80基の販売がボーダー」と囁かれる。計画どおりの販売が続く保証がない上に、メンテナンス費用も相当かかる。
「供給過多」については、2016年の死亡者数は全国で約130万人。「多死社会」に向かっているが、2041年に165万9000人(国立社会保障・人口問題研究所推計)のピークを迎えた後、減少の一途をたどる。大阪、名古屋、福岡など地方の拠点都市にも増える勢いの自動搬送式の納骨堂だが、長期的にみても大丈夫なのだろうか。