作家の佐藤優氏と思想史研究家の片山杜秀氏が「平成史」を語り合うシリーズ。国際情報誌SAPIO誌上で行われた対談は最終回を迎え、単行本『平成史』(小学館)としてまとめられた。最後のテーマは、「今上天皇の足跡」となった。
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片山:今上天皇は昭和天皇のカリスマが付与された上、祭祀への熱心さや災害時での国民と共感共苦する姿勢の顕示によって、公と私のバランスはよくとれていたと思います。
ところが皇太子になりますと、もっと私の方につっこんでいる印象がある。今上天皇は人間天皇として素晴らしいと言える。それなら皇太子が人間皇太子を突き詰めて、本当に人間になってしまった方がいいのではないですかと言いたいくらいに、あまりに普通な感じになってくるのではないか。それこそ人間天皇の最終型とも言えるけれど、それで天皇像が新たな民主主義的強固さを獲得できるかというと別問題でしょう。
佐藤:私はポスト平成の天皇制と日本社会は、日本の外部空間との接し方で変わると考えているんです。
片山:外部空間ですか?
佐藤 :そうです。日本には沖縄、アイヌ、そして創価学会という天皇神話を共有していない領域が三つある。この領域との軋轢がどうなっていくかが天皇制の将来を左右するのでは、と。