はるか年の離れた妻を娶った大金持ちが、入籍して間もなく死ぬ。大病もなく、それどころか前日までピンピンしていたのに──。小説やドラマでは使い古された“舞台設定”だが、それが現実の世界で起きた。
「そんなに死んでほしかったんか!」──遺族のひとりが声を荒らげた。
「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助氏(享年77)が急死したのは5月24日。遺体は検死のために警察に運ばれ、5日後の29日にようやく通夜が営まれた。その会場で怒号が響いた。親族の怒りの矛先は喪主に向けられていた。野崎氏の妻だ。
野崎氏は和歌山県田辺市で酒類販売業や不動産業などを営む実業家で、資産は50億円あると言われている。彼の名を一躍有名にしたのは、2016年2月の“事件”だった。当時交際中だった50歳近く年下の自称モデルに「自宅から現金600万円と貴金属、合計6000万円相当を盗まれた」と報じられたのである。
“好色のジジイがカネ目当ての若い女性に裏切られた”としてワイドショーなどで面白おかしく取り上げられたのだが、取材に対して、高級デートクラブなどに登録し、カネを払って若い女性と関係を持っていたことを堂々と告白した野崎氏は「紀州のドン・ファン」と呼ばれるようになった。女性との交際に費やしてきた総額は30億円にものぼるという。